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  第肆話 『思兼』  
 



左馬介たちが安土山に到着したのは、日も落ちて辺りが暗くなりかけた頃だった。

安土城の本丸が見える高台に立ち、城の様子を見下ろした左馬介は愕然とした。

篝火に赤く照らされた何百何千という幻魔が、城のそこかしこで蠢いていたからだ。

それは左馬介が鬼の力をもってしても、とても一人で相手に出来る数ではなかった。

もしここで鬼軍珠を使う事が出来れば、それは可能だったかもしれない。

が、鬼の軍兵は先の戦いでその大多数を消耗していた。

鬼軍珠は時が経てば軍兵の数を次第に増やしていく。

しかし、目前の大軍を相手に出来るまで回復するには、まだ何十年もの歳月が必要だった。

左馬介は歯痒さを感じながらも、光秀の軍が到着するのを待つしかなかった。

「嫌な予感はこの事だったのか・・・」

左馬介は右腕の篭手を睨みながら呟いた。

「嫌な予感?」

不思議そうな顔をして阿児が顔をのぞかせて言う。

「・・・・・。」

左馬介は目を合わすことなく押し黙った。

「ねぇ、何なのさっ。」

阿児が左馬介の目の前にずいっと迫ると、小さく息をついて言った。

「・・・ああ。信長をこの篭手に封じてから、時々右腕が疼くんだ」

「えっ、そうだったの・・。」

「言うとお前が心配するだろうと思って黙っていたんだ。もっとも、あの幻魔の出現が

 篭手の中にいる信長の仕業だとは思えんが・・・。

 いずれにせよ、この篭手は一刻も早く封印してしまわねば。

 だが・・・」

と左馬介は突然拳を地に叩きつけた。

「それをどこでどうすればいいのだ。どうすればこの篭手を外す事が出来る?

 くそっ、何か手掛かりはないのか・・・」

「左馬介・・・」

珍しく冷静さを欠き、苛立ちをぶつけるように城内の幻魔へ目を向ける左馬介を見て、

阿児は僅かに後ろへさがって彼に背を向け俯いたまま黙ってしまい、 そのまま振り返ろうとはしなかった。

 

「くっ・・・」

また左馬介の右腕に痛みが走った。それはまるで信長が彼を嘲笑っているかのようだった。

舌打ちをしながら、左馬介は再び篭手を睨んだ。

阿児は依然俯いたままだった。


光秀たちが到着するまでの間、左馬介は城下に出没する幻魔との小規模な戦闘や

城の周囲の偵察を行っていた。

今の彼に出来るのは、その戦闘の中で幻魔の勢力をおよそ調べる程度であった。

・・・この時、左馬介は戦いの中で妙な違和感を感じていたが、

その答えを出す事は出来なかった。



光秀軍が安土に到着したのは、左馬介が到着してから二日も経った後だった。

一旦坂本城で軍備を整えていた為、出発が遅れたのだ。

本能寺より連戦では仕方なかった。

左馬介から城の様子を聞いた光秀は直ちに陣を整え、『翌朝攻撃』の触れを出した。



そして朝日が昇った。

第一陣が一斉に本丸に向かって攻めかかると、おびただしい数の幻魔が方々から現れ、

本丸からは矢が雨の如く降って来た。

左馬介も大鹿毛に乗り、一匹でも多くの幻魔を切り伏せるべく獅子奮迅の戦いを見せた。

しかし、時が経つにつれ明智兵の骸が目立つようになってきた。

所詮、「人」では限界があった。

光秀は戦局を立て直すべく、一旦兵を引いた。

すると意外な事に、幻魔たちは深追いする事なくそのまま姿を消した。

やがて安土城の周囲は不気味な静けさに満たされていった。



同じような戦闘が二日間続いた。

明智軍が攻め、幻魔の猛攻の前に引き、そこで幻魔の攻撃がピタリと止む。

左馬介は幻魔の一連の行動を不審に思っていた。

通常、刀足軽をはじめとする造魔や下等幻魔は、人間を発見するや闘争本能をむき出しにして

襲いかかり、どのような状況になっても逃走や機を見て引いたりするような事はしない。

彼らには恐怖心や思考能力はない、或いは除去されているからだ。

 

しかし、である。

城からは、こちらの軍勢が見えている筈なのに、攻撃を仕掛けない限り幻魔が攻めてくる

事はなかった。当然、明智の本陣へ攻め込もうとする気配もない。

―いったい、これはどういう事なのだ?−

本陣のある高台から城を睨み、左馬介は思案を巡らせていた。

「左馬介。」

左馬介は光秀の声に気づきつつも真っ直ぐに城を見据えていた。

両腕を組み、左馬介と同じく城を見つめたまま光秀は続けた。

「ここ数日の幻魔の動き、何かおかしいと思わぬか?」

当然ではあるが、同じ事を光秀も考えていたのである。

左馬介は顎に拳を当て、足元の小さな岩を見るともなく見ながら暫く考えていたが、

突然視線を上げると光秀の方に向き直り、確信を以って答えた。

「城の中にあの幻魔たちを操っている者がおります。

そいつを倒し、更に地下に潜む巨大な幻魔を倒さなければ、

この戦いは・・・・・終わらぬはずです。」


この時、左馬介の脳裏に浮かんだのはあの「男」の顔である。


 
     
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