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  第壱話 『予兆』  
 


時は天正十年、六月。

歴史には残されぬ戦いの末、幻魔と呼ばれる異形の者たちの王、織田信長はその野望と共に本能寺に沈んだ。

幻魔を滅することの出来る唯一の一族、鬼の一族が幻魔との果てしなき戦いに決着をつけた瞬間・・・のはずだった。

これは今まさにその燃え盛る本能寺を後にせんとする、ある男の物語。



左の踵に炎が掠ったとき、右の爪先が草を踏んだ。

その歩みを止め、男は小さく一つの息を吐き、肩の力を抜いた。

「やっと・・・終わったね」

傍らから聞こえる・・・戦場には場違いとも思える・・・少女の声に応えるように男は右腕で妖しく光る篭手に目をやる。


その男、名を明智左馬介秀満。

明智光秀が甥にして、寡黙なる男、天賦の才を持つ者。

そして、鬼の一族よりその力を授かりし鬼武者。


「長かったね〜・・・他の皆からしたら僅かな時間だったんだろうけど・・・。でも、これでやっと終わったんだよ、左馬介!」

少女の喜びの声をよそに、左馬介は何も語らず、表情を変えずに歩を進める。


少女の名は阿児。

左馬介と共に邪なる者達、幻魔と戦い続けてきた身の丈わずか一尺ほどの背に『翼』を持つカラス天狗の一族である。

もっとも・・・直接 武を振るっていたわけではないが・・・。


「ちょ、ちょっとぉ、どこ行くんだよ〜?」

左馬介は阿児の問いかけに

「伯父上に報告だ」

と前を見据えたまま一言答えた。

「も〜、ちょっとは感慨に耽るとか余韻に浸るとかすれば・・・」

「阿児」

「何よ」

「いつまでもそんなところに居ると危ないぞ」

直後、阿児の翼を降ってきた炎の塊が掠った。

翼の熱さを背筋の冷たさが凌駕し、身体が震える。

「ちょ、ちょっと余韻を味わってただけだよっ!!」

阿児は精一杯の虚勢を張ると、じわじわと戻ってきた熱さを堪えつつ左馬介の背中を追った。


「伯父上・・・」

左馬介は片膝をつき、眼前の巨大な炎を見つめる武将に頭を下げた。

「そうか・・・遂に・・・」

惟任(これとう)日向守・・・明智光秀は炎から目を離すことなく、そう呟いた。

生きて左馬介が戻った。それだけで報告を聞くまでも無く、結果は一つというものだ。

そこへ阿児が少しムッとした顔で割り込んだ。

「言っとくけどね〜、ただ信長を斬ってきただけじゃないんだよ!あの中ではね・・・」

「な、何者だ、お主は?」

「阿児。そのことは俺から申し上げる」

「・・・む〜」

左馬介の言葉に、阿児は少しすねた顔をして引き下がった。

左馬介は、燃え盛る本能寺の中で起こった全てを光秀に話した。

時を越えた幾多の戦いの事を。

光秀は流石に何度も驚いた顔をしたものの、疑念を持つことなく、黙って左馬介の話を聞き続けた。


「・・・なるほど。ご苦労であった。」

最後まで聞き終えた光秀は、やっとのことでそれだけ言葉を発した。

もはや自身の想像可能な範囲を遥かに超えた話に、他の言葉が出なかったのだ。

「伯父上。私は、この戦が収まり次第、再び旅に出るつもりです。 この信長を封じた鬼の篭手を封印するために・・・」

焼けた鉄のように赤黒く不気味な光を放つ篭手・・・左馬介は決意に満ちた目でそれを見ていた。


邪なる者・・・幻魔を討つために鬼の一族より授けられし鬼の力。

それは、これまでの戦いで数多の幻魔の魂を吸い、その力を増してきた。

そして今、この中には先の戦いで斬り伏せた信長が封じられている。

『幻魔王』信長の魂が・・・。


「そうか・・・左馬介よ、此処の後の事は我等に任せ、坂本城へ戻るが良い。

想像を絶する戦いの後だ。さぞかし疲れも溜まっておろう。

これしきの数であれば我ら明智の兵でも掃討できる。

城でゆるりと休んでから旅に出ても遅くは無かろう。」

「・・・有り難き幸せ。ではお言葉に甘え、これにて失礼いたします。」

左馬介は立ち上がり踵を返すと、光秀のもとを後にした。


「ねぇ、残りの奴ら、倒していかなくても良いの?」

阿児が左馬介の顔の横を飛びつつ、覗き込んで尋ねる。

確かにまだ、境内の中には幻魔が幾らか残っている。

普段の左馬介なら、最後の一匹を 斬るまで戦い続けただろう。

だが、

「折角のご好意だ。明智の軍には手練れの者も多い。この場は伯父上にお任せする。」

そう答えた。


信長が倒れた今、光秀の言うとおり、統率の執れなくなった残りの幻魔は強さも数も知れており、霧散し始めている。

お任せしても問題は無いと左馬介は思った。


何より、左馬介は疲れていた。

永年の宿敵を討ち果たしたことへの安堵した為だろうか。

とにかく、今は体を休めることを望んでいた。


「行くぞ、阿児。」

「あ、うん・・・。」

振り向くことなく城へと向かう左馬介の後を追いつつ、阿児は背後にそびえる炎に目を移した。

本能寺を包む炎がいつまでも天を赤く焦がし続けていた。





日が高くのぼった頃、二人は街道を歩いていた。

道の袖には小川が流れ、サラサラと涼しげな音をたてている。

突然、左馬介は道を外れて川原に下りて行き、振り向いて阿児に言った。

「・・・ここで少し待っていてくれ」

「ん、どうしたの?」

「水を飲んでくる」

「そう、分かった。あんまり待たせないでね」

「ああ」

色とりどりの草花が、まるで初夏の陽気を満喫するように一面に咲き誇っていた。

左馬介は川原に下り、

その喉の渇きを潤そうと膝をつき両の手を水に浸そうとした、その時!

「・・・っ!」

にわかに、右腕に突き刺すような痛みが走る。

反射的に篭手に目をやる。まだ僅かに痺れた様な感覚が残っている。

「またか・・・」

左馬介の右腕は、信長を鬼の篭手に吸収した直後から時々このように疼いていた。

まるで封じたはずの信長が抗っているかのようで、

左馬介には何か悪い出来事の前触れのようにも思えた。


―やはり一刻も早く、この篭手を封印しなければならない。

しかし何処に・・・どのようにすれば、よいのだ?

このまま旅に出て、果たして封印する方法が見つかるのか―


左馬介は先の見えぬ不安を胸に、空を見上げた。

初夏の蒼く透きとおった空の彼方に浮かぶ入道雲が彼の目には妙に禍々しいもののように映っていた。


 
     
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